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誌上法話 〜今をここで生きる〜

2016年9月号

小川英爾


「過ぎ去った日のことは悔いず、まだ来ない未来にはあこがれず、とりこし苦労をせず、現在を大切にふみしめてゆけば、身も心も健やかになる。」 パーリ『中部経典』より
 
インドで聞いたシスターの法話
 以前インド第3の都市コルカタにある『死を待つ人の家』を訪ねたことがあります。キリスト教のシスター(尼僧)としてノーベル平和賞受賞でも知られるマザー・テレサが開いた、宗教を問わず貧困と病気で苦しむ人たちの最期を看取るための施設です。今でも路上で死を迎える人がいる街ですから、その役割は大きいのです。
 数日間通って患者の洗濯、掃除、話を聞く(身ぶり手ぶりですが)等の手伝いをしました。これは貴重な体験でした。このボランティアに世界各地から若者が集まり、日本の女子学生が多いことも驚きでした。
 そこでは週1回、日本人のシスターが話す日があり、私たちも女子学生に混じって聞かせていただきました。「あなた達は遠い日本からお金をかけてインドにまで来てボランティアをなさる。立派なことですが、そのお金と時間があれば周囲でもっと身近に困っている人たちの力になることができますよ」。優しい言葉の中に厳しい指摘が含まれているお話でした。
 
『置かれた場所で咲きなさい』 
 生前のマザー・テレサが1984年に来日した際、通訳をしたのが渡辺和子さんというシスターです。シスター渡辺は昭和11年、9歳の時に二・二六事件で父を失いました。自宅居間の目の前1mで、当時軍の中枢にいた父が青年将校に襲撃され、43発の銃弾で命を落としたのを目撃したのです。
 やがて18歳でキリスト教に入信し、勉学を重ねて31歳という異例の若さで岡山ノートルダム清心女子大学の学長に就任し、91才の現在も同学園の理事長です。ちなみに私の娘たち4人は、新潟市内にある系列校で中学高校6年間を過ごしました。当時娘たちから「今日は渡辺理事長先生のお話があって、すごく感動した」とたびたび聞いたものです。
 そのシスター渡辺には数多くの著書があります。なかでも2012年に出版された『置かれた場所で咲きなさい』(幻冬舎)はベストセラーになりました。その中に「時間の使い方は、そのままその命の使い方、置かれたところでこそが、今のあなたの居場所なのです。こんなはずじゃなかった≠ニ思う時にも、その状況の中で咲く%w力をしてほしいのです」の一文があります。インドで日本人シスターに聞いた話を思い出しました。
 
今ここで
 冒頭のお釈迦の言葉を改めて読んでみてください。お釈迦様もキリスト教のシスター渡辺も、過ぎ去った過去やあてのない未来に心奪われることなく、今このときこの場で生きることの大切さを説いておられることがわかります。
 

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