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HOME >> 寺報「妙の光」から >> バックナンバー >> 2003.12〜2013.12 >>「実にこの世においては〜」

「実にこの世においては、恨みに報いるに恨みを以てしたならば、ついに恨みの息(や)むことがない。恨みを捨ててこそ息(や)む。これは永遠の真理である。」(『発句経』中村元・訳)

2013年9月号

小川英爾

スリランカという国

インドの東隣50キロのインド洋に浮かぶ小さな島国、スリランカをご存じでしょうか。昔はセイロンといい、いまも紅茶で知られています。面積は北海道の8割しかありません。この国の人々の多くは熱心な仏教徒ですが、ヒンズー教、イスラム教、キリスト教もあって、宗教間対立による紛争が今も起きています。

救われた日本

実はこの国の一人の政治家に戦後の日本が助けられたことで、私たちのいまがあるという事実が忘れられようとしています。それは昭和26年9月、日本の戦争責任と懲罰を連合国が議論する『サンフランシスコ対日講和会議』でのことです。一部の国からは、日本を米英中ソの四カ国で分割占領し、首都の東京は四ヵ国が共同占領するという強硬な案が出されました。

会議の席上、スリランカ代表で当時の財務大臣ジュヤワルデネ氏が、51か国の代表を前に冒頭のお釈迦様の言葉を紹介し「自分の怨みを捨ててこそ、怨みの連鎖はやむ」と、自国の日本への賠償請求権を放棄すると宣言したのです。さらに「アジアの将来にとって、完全に独立した自由な日本が必要である」と、日本の分割論に反対しました。この演説が日本の分割統治案を真っ向から退けたことで、日本国民を勇気づけ、戦後の復興が始まったといわれています。

この戦争でスリランカは直接の侵略を受けることはなかったものの、重要産品の生ゴムの損害は大きく、賠償請求して当然だったそうです。しかしながら熱心な仏教信者として、お釈迦様の言葉を実践したのでした。

お経は口だけでなく身で読む

この話を紹介した本(『仏陀南伝の旅』白石凌海著)を読んでいたこの夏、人気テレビ番組『世界ふしぎ発見』で、この演説が取り上げられたのを偶然見ました。番組の最後に出演者の黒柳徹子さんが「こんなに大切な話なのにちっとも知りませんでした。どうして学校などで皆さんにもっと教えないんでしょう」と言われたことにまったく同感です。

ジュヤワルデネ氏はその後スリランカ大統領になり、90歳で亡くなりましたが、遺言で眼球の片方が日本の、もう片方がスリランカの目の不自由な方のために角膜移植されたと、番組でさらに紹介されました。

東京江戸川区宣要寺の成川上人(54歳)には、学生時代から30年以上にわたり妙光寺のお盆のお手伝いいただいています。この話に直接関係ありませんが、師は日本に留学する多くのスリランカ人僧侶の保証人を長年引き受けるなど、数々の支援を続けておられます。

お経はただ読むだけでなく、このように説かれている内容を実践することが一番大切です。しかし漢文のままのお経では、現代の私たちには内容すら理解できないのも現実です。わずかずつですが、お経の内容をこのページでお伝えできればと思っています。

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